長崎港や博多港から船に乗り、いくつもの島を渡り歩く——五島列島の旅は、その移動そのものが目的になりうる場所だ。ひとくちに五島列島と言っても、実際は福江島・久賀島・奈留島・若松島・中通島を中心に、大小さまざまな島が南北およそ80kmにわたって連なっている。飛行機なら福岡から福江島まで40分ほどで着いてしまうが、フェリーや高速船を乗り継いで島から島へ渡っていくのが、この土地ならではの味わい方だ。ここでは本土からのアクセスと、島と島のあいだの移動手段を整理しながら、どう回ると無理がないのかをまとめていく。
まずは五島列島の全体像をつかむ

五島列島は、大きく「下五島」と「上五島」に分けて考えると分かりやすい。福江島・久賀島・奈留島のあたりが下五島、若松島・中通島のあたりが上五島、さらに北へ行くと小値賀島や宇久島が浮かんでいる。観光と行政の中心になっているのは、下五島の福江島と、上五島の中通島の二つ。多くの旅程は、このどちらかを起点にして周辺の島へ足を延ばす形になる。島ごとに港も運航会社も少しずつ違うので、最初に「自分はどの島を中心に回りたいのか」を決めておくと、船の選び方がぐっと楽になる。
本土から五島へ——玄関口は3つ

本土から五島へ渡るルートは、長崎港・佐世保港・博多港の3か所が中心になる。
長崎港からは、九州商船のフェリーとジェットフォイル(高速船)が出ている。福江港まではフェリーで約3時間10分、ジェットフォイルなら約1時間25分ほど。時間を優先するならジェットフォイル、ゆったり過ごしたい・車を運びたいならフェリー、と使い分けるとよい。長崎発の便は奈留島や上五島の有川港・奈良尾港にも向かうので、目的の島に合わせて選べる。船種ごとの詳しい時刻や料金は五島列島フェリー完全ガイドや五島列島高速船の解説にまとめている。
佐世保港からは、上五島の有川港や友住港へ渡る便がある。長崎県北部から向かう場合は、こちらのほうが近いことが多い。
そして少し変わり種が、博多港から出る野母商船の「フェリー太古」だ。夜に博多を発ち、翌朝にかけて宇久・小値賀・上五島(青方)・福江を順にたどっていく夜行便で、移動しながら一泊できるのが大きな利点。寝ているあいだに五島へ着いてしまうので、現地での時間をたっぷり使いたい人に向いている。北の玄関口になる小値賀島を起点にしたい場合も、この便が便利だ。
島から島へ——五島の中での移動
五島の旅の本番は、むしろ島と島のあいだの移動にある。福江島と奈留島のあいだは高速船で約30分、フェリーでも40〜45分ほど。五島旅客船の高速船「ニューたいよう」やフェリー「オーシャン」、九州商船の便などが、下五島の島々をこまめに結んでいる。久賀島や若松島といった小さな島へは便数が限られることもあるので、訪れる日の時刻表を事前に押さえておきたい。
北部の小値賀島・宇久島へは、福江や中通島(有川・青方)から、あるいは博多発のフェリー太古でアクセスする。島が変わると運航会社も変わるため、「この区間はどの会社の船なのか」を地図の上で一度整理しておくと、当日になって迷わずに済む。
どう回る?——南北どちらから攻めるか
五島列島は南北に長いので、回り方はおおむね二通りに整理できる。ひとつは本土から下五島(福江島)に入り、奈留・上五島へと北上していくパターン。もうひとつは博多や小値賀から入って、北から南へ下りていくパターンだ。フェリー太古を使うなら北側から入る流れが組みやすく、長崎からジェットフォイルで福江に入るなら南側起点が自然になる。
どちらを選ぶにせよ、島をまたぐ船は本数がそれほど多くない。「午前にこの島、午後に次の島」と詰め込みすぎず、一日一〜二島くらいのゆとりある行程にしておくと、欠航や乗り遅れがあっても立て直しやすい。島の数を稼ぐより、ひとつの島でゆっくり過ごすほうが、五島らしい時間の流れを味わえるはずだ。
乗る前に知っておきたいこと

ジェットフォイルや高速船は完全予約制のことが多く、繁忙期はすぐに満席になる。早めの予約が安心だ。一方でこれらの船は風や波に弱く、天候によっては欠航することもある。最終的な運航可否は出港のおよそ1時間前に決まるため、当日の朝は各社の運航状況ページを必ず確認しておきたい。
また、船は定期検査のためにまとまった運休期間が入ることがある。旅行の日程を組む段階で、その期間とぶつかっていないかをチェックしておくと安心だ。車やバイクを載せたい場合はフェリーを選ぶことになり、区間によっては電話予約が基本になる点も覚えておきたい。
よくある質問
Q. 日帰りで複数の島を回れる?
福江島の周辺など近い区間なら不可能ではないが、船の本数が限られるため、現実的には島ごとに一泊する旅程のほうが無理がない。移動に追われず、島の空気を味わう時間も残せる。
Q. 高速船とフェリー、どちらを選べばいい?
速さ重視ならジェットフォイル(高速船)、料金を抑えたい・車を運ぶならフェリー。揺れに弱い人は、波の影響を受けにくいジェットフォイルのほうが快適に感じることも多い。
五島列島は、船を乗り継ぐ手間そのものが旅の味になる場所だ。島ごとに表情が違い、港に降り立つたびに空気が変わる。まずは玄関口と中心の島を決めて、そこから少しずつ足を延ばす——そんな組み立て方で、自分なりの島めぐりを描いてみてほしい。