鹿児島から南へ向かって、海の上に島が点々と続いていく——奄美・トカラ・大隅の島々は、本土からの長い航路で結ばれた、いわば「海の一本道」の上に並んでいる。飛行機なら奄美大島まで1時間ほどだが、フェリーに乗れば、種子島やトカラの島影を横目に、ゆっくりと南下していく船旅そのものを味わえる。ここでは本土に近い島から順に、どの船でどう渡るのかを、北から南へとたどっていこう。
大隅諸島——本土にいちばん近い種子島・屋久島

鹿児島から南下して最初に出会うのが、大隅諸島の種子島と屋久島だ。どちらも鹿児島本港から高速船「トッピー&ロケット」が出ており、種子島まで約1時間35分、屋久島まではおよそ2時間前後で着く。車を運びたいならカーフェリーという選択肢もあり、時間はかかるぶん料金を抑えやすい。屋久島のさらに先には、火山の島・口永良部島も浮かんでいる。
トカラ列島——週2便だけの「秘境への定期船」

屋久島と奄美大島のあいだに点在するのが、トカラ列島だ。口之島から宝島まで、7つの有人島が南北に連なっている。この島々への足は、十島村が運航する村営船「フェリーとしま2」がほぼ唯一。鹿児島港を出ると各島に寄りながら南下していき、いちばん遠い宝島までは片道でおよそ13時間にもなる。便数は週2便ほどと限られ、しかも全便が同じ航路をたどるため、島から島へ自由に飛び移るのは難しい。だからこそ手つかずの自然が残る「秘境」として知られている。諏訪之瀬島や悪石島のように、ひとつの島へじっくり滞在する旅に向いている。
奄美群島——鹿児島と沖縄を結ぶ大動脈

トカラの先に広がるのが、世界自然遺産にも登録された奄美群島だ。ここを貫いているのが、鹿児島と沖縄を結ぶフェリーの大動脈。マルエーフェリー(A’Line)とマリックスラインの2社が1日ごとに交替で運航しており、鹿児島新港を出て奄美大島(名瀬)から徳之島・沖永良部島・与論島を経て、沖縄(本部・那覇)までを一本でつないでいく。鹿児島から奄美大島までは約11時間。毎日1便ずつ走っているので、奄美群島の島めぐりはこの航路が基本の足になる。沖縄側からも同じ航路で北上できるため、「沖縄から奄美へ」という逆向きの旅も組める。
奄美大島から、さらに小さな島へ
奄美大島に着いたら、そこからさらに小さな島へ渡ることもできる。島の南部・瀬戸内町の古仁屋港からは、加計呂麻島・請島・与路島へ、町営の定期船やフェリーが出ている。とくに加計呂麻島は古仁屋から20分ほどと近く、日帰りでも訪ねやすい。また、鹿児島本港から喜界島を経由して奄美へ向かう「喜界航路」もあり、喜界島へはこの航路か、奄美大島からアクセスする形になる。
乗る前に知っておきたいこと
この海域は外洋に面しているため、天候によって「条件付き運航」や欠航になることが多い。とくに梅雨や台風の時期は、特定の寄港地だけ抜港(とばし)になることもあるので、当日の運航状況は必ず確認しておきたい。長距離フェリーの客室は、雑魚寝の2等から個室までさまざま。11時間以上の航海になることもあるため、一晩を快適に過ごしたいなら、早めに上等な客室を押さえておくと安心だ。予約はおおむね1ヶ月前から受け付けが始まる。なお、奄美群島には住民・準住民向けの運賃割引もあるが、観光客は対象外なので、料金は正規運賃で見ておこう。
よくある質問
Q. 奄美大島から沖縄まで船で行ける?
行ける。マルエー/マリックスの鹿児島〜沖縄航路が、奄美大島・徳之島・沖永良部・与論を経由して那覇まで結んでいるので、奄美から南下して沖縄へ抜ける旅も組める。
Q. トカラ列島は日帰りで回れる?
ほぼ不可能と考えたほうがいい。フェリーとしまは週2便ほどで、島に着いたら次の船まで数日空くこともある。トカラへ行くなら、島で泊まる前提で日程を組むことになる。
奄美・トカラ・大隅は、本土から南へ下るほどに、島も海も少しずつ表情を変えていく。種子島の宇宙基地、トカラの手つかずの自然、奄美の亜熱帯の森——同じ航路の上にありながら、どれもまるで違う世界だ。まずは行きたい島を決め、そこへ向かう船とその所要時間を押さえることから、長い船旅の計画は始まる。